神保町巡礼。

今週のお題「ちょっとしたぜいたく」

活字少女、というわけではなかったのだが、昔から本が好きだった。
正確にいえば、本という物理的存在。
さらに正確にいえば、古い本に染み付いた香り。

そんなわけで、高校生の頃から、休日に一人神保町を巡るのは、私にとっての
密かなハレの行事である。もちろんここかしこの古書店には行くが、神保町は
特別なのだ。何やら街に奇妙な力が宿っている。

多くの古書店巡礼者たちと同様、私も、馴染みのお店をめぐり、折々の好奇心を
満たしたのち、何冊かの本を人生の友となるべくして手に入れる。

そしてその本たちとともに必ず訪れるのが「神田ぶらじる」。
そこで、ペルーチャンチャマイヨ、という豆のコーヒーを頼む。

まさに、これが私にとってのハレのなかのハレ。
神保町巡礼のクライマックスである。
地下の仄暗い店内で、コーヒー用のやかんのしゅんしゅん音を立てるのを聞きながら、
胸躍らせて本の扉を開き、いつものように青い模様のコーヒーカップに入れられた
ペルーチャンチャマイヨを一口。

すると、わずらわしいあらゆることから開放されて、魂が元気になる。
私は私を取り戻せるのだ。まさに、命水のようなものなのである。
これぞ贅沢!!