それはベンジャミン・バニー氏。

今週のお題「あこがれのヒーロー、ヒロイン」

ステッキ片手にパイプを燻らす紳士。
悠然と散策していると、息子と甥っ子の生死に関わる大ピンチに遭遇。
そして愛用のステッキを駆使した勇猛果敢な救出劇。
もちろん二人の無謀さを叱ることも忘れない。
理想的な父親である。

うさぎ、だけど。


子供のころ、ピーター・ラビットのシリーズが好きだった。
当時は子供服のファミリアでピーター・ラビットのものを扱っていて、
おこづかいをためては、この小さい本を買ったものだ。

もちろんお話だけでなく、ポター女史の挿絵のかわいらしさに
胸ふるわせていたわけだが、このベンジャミン・バニーの父、
ベンジャミン・バニー氏は子供心に衝撃だった。

かわいくはない。
しかし、ダンディである。
しかもうさぎながらに、猫を撃退するのだからすごい。
うさぎ界の英雄。
ピーターの父がマクレガーさんにうさぎパイにされてしまった
ことを思うと、あまりにも対照的である。

いや、うさぎはたしかに美味なのだ。
私もピーター・ラビットが好きだったので、小学校6年生のとき
初めてロンドンに訪れた折には、フォートナム&メイソンの
グローサリーでうさぎのパテをみかけ、なんて可哀相に、などと
はじめは思っていた。
が、偶然にも知らずして食べてしまい、考えを改めた。
淡白だけど、鶏肉よりも味があって、おまけに皮もついていなくて
(嫌いなのである)、理想的♪
結果、ロンドンを離れる際には、うさぎパテをお土産に買ったのであった…

ところが、である。
ベンジャミン・バニー氏は、全くもって、パイにもパテにもなりそう
にはない。猫にも人間にも負けないような、知性や生命力に加えて
運の強さが、彼にはある。
そのうえ勇敢で、倫理観あふれる、堂々たる紳士。
これを、ヒーローと言わずして、なんと言おう!!

というわけで、ベンジャミン・バニー氏は、私の心のヒーローなのである。

うさぎ、だけど。