“ロックフェッラー”風パスタのすすめ。

おいしいものは食べたいけど、なんだか料理するのも億劫で。

そんなときに最適なパスタを一つ。
その名も“ロックフェッラー”風パスタ


私は昔イタリアに住んでいたのだが、そのときのラガッツォの親戚に、トリノ
“ロックフェッラー”(イタリア語で発音するとこうなる)という食堂をやっている
ヌンツォという人がいた。赤ら顔で背が低くてまるまるとしていて、
あまりお上品ではないけれど、おいしいものには目がなくて、
よそのお店にいくと、奥さんのアンナと二人してちゃっかりと味を盗んでしまうという、ちょっとエッチで陽気なおじさん。
ラガッツォの親戚の集まりで会ったとき、「トリノに来たなら、明日はうちの店においで」と言われたので、二人して翌日行ってみた。

シンプルでカジュアルなつくりのお店は、昼時なのでそれなりに
混んでいたものの、「チャーオ!!」というアンナの出迎えを受けて、
席に案内された。
「料理はこちらにまかせてね!!」
と、たっぷり、プリモもセコンドも出してもらい大満足。
全く日本人を見かけない地域だったし、グルメ向けというよりは、
イタリア人の日常に組み込まれた食堂なので、
日本に紹介される可能性は少ないと思うけれど、
いわゆるマンマの味でもなく、伝統的料理でもなく、
地元密着型の美味しいB級グルメのお店といった位置づけに近いのだろうか。

そこで、印象的、かつ私が気に入ったのがこの“ロックフェッラー”風パスタ。

「これはね、うちの特製なのよ。ダニエーレ(ラガッツォの兄)なんて、
毎日うちに来てはこれを頼んでいたのよ。そのうち、お目当てはうちの料理
より、ナディア(この夫婦の娘。現ダニエーレの妻)になったみたいだけどね」
アンナが笑って持ってきたパスタは、マッケローニにソースだけがかかっているだけのもの。

初めて食べる味、だけどなぜか知っている味。なんだ!?

食べ終わっても気になったので、ようやっとプランツォ(昼食)の忙しさから
開放されたヌンツォのいる厨房に顔を出して、聞いてみた。

「ああ、あれ気に入った?いいだろ」
ヌンツォは汗をふきふき目を三日月にして話を続けた。
「あんたは日本人で知らないかもしれないから教えておくよ。
イタリア料理の極意はセンプリチタ(シンプルさ)。そして料理人になるには
さらに発想力が必要なんだ

イタリア人らしく身振り手振りを加えて語るヌンツォは、真剣だったが、
同時に楽しそうでもあった。

「あれはね、サルサ・ディ・ポモドーロ(トマトソース)とペスト(ジェノヴェーゼ
ソース)とパンナ(料理用生クリーム)をあわせてあるんだよ

なるほど。たしかにどれも知っている味である。

「どれもイタリア料理らしいセンプリチェ(シンプル)なソースだろ。でも
俺はあるとき思いついた。そのトレ・コローレ(三色)を合わせたらどんなに
なるかって」
ヌッツォは人差し指を頭にやってジェスチャーしながらガハハと笑った。
「アイディアだよ。うまかっただろ、ん??」


というのが、このパスタの由来。
なーんだ、と思うかもしれないが、なんともあとひきになり、結局ソースを
パンにつけてぺろっといっちゃうくらいのものなのである

忙しいときは、パスタだけゆでて、市販のトマトソースと
ジェノベーゼソースと生クリームをフライパンで温め、
茹で上がったパスタをあえるだけでOK。
いつもと違う味がいいな、というときや、ちょっとずつソースが余っている
ときにもおすすめ。

以下、注意点です。
1 パスタは、マッケローニやペンネなどのショートパスタにする。
2 トマトソースは、ピッツァに利用するような、トマトの水煮を濾したり
  潰したりしたもの、あるいはパッサートの瓶を15分から20分
  煮詰めたものがよい。
  ジェノヴェーゼソースなどとの兼ね合いもあるので、
  よりシンプルなものの方がおいしくなるので。
3 私の場合、フライパンに少量のオリーブオイルを入れて、
  水煮缶の半量くらいのトマトを手でつぶしたりテーブルナイフで
  細かく切ったものを15分程度煮込み、そこにジェノヴェーゼソースを
  入れて(量は、自家製でも市販の物でもよいが、メーカーによって
  味が異なるので、適宜味をみる)、最後に生クリームを入れて味をみる。
あとは茹でたてのパスタをフライパンに入れて、
ソースとなじませてできあがり。

ぜひお試しあれ!!