オリーヴオイルのある生活 2(イタリアにて)

「イタリアってなんでもかんでもオリーヴオイルだから、嫌になっちゃう」

とぶつぶつ文句を言いながら、スーパーの買い物かごにバターを投げいれた
のは、ミュンヘン出身のアニカである。アニカは、私のフィレンツェでの
最初の同居人であった。

彼女が文句を言うように、フィレンツェは料理の際には、オリーヴオイルが
中心である。外食すれば必然的にオリーヴオイル風味の料理がでてくる
わけで、ドイツ料理で育ったアニカは飽きてしまったらしい。
日本流にいえば、中国料理は好きだけど、毎日ゴマ油で飽きちゃった、
というかんじだろうか。

ともあれ、そんなアニカは、自宅で料理するときは、基本的にバターを
フライパンにしき、オーヴン料理でもバター、パスタ類をつくる際も、
クリームソースのものにすることが多く必然的にバター、といった風で、
液体の油はドレッシングを作るとき専門。その中でもオリーヴオイルは
「イタリア風」サラダや「ギリシア風」サラダを作るときに特別に
使用するくらいで、いつも私のオリーヴオイルを使っていた。

私がアルプスより北側のヨーロッパ人と生活したのは、このアニカと
もう一人、スウェーデン人がいたが、バターとオリーヴオイルの
利用法に関しては同じような感じだったので、まぁ、この感覚が
彼らのスタンダードなのだろう。

さて、フィレンツェに数ヶ月住むようになってくると、
ぼちぼちとイタリア人の友人知人もできはじめる。
チェーナ(夕食)によばれたり、外で飲んだあとの夜食に誰かの
家に行ったりする機会も増えてくる。
そこで幾人かのクッチーナをのぞいて見ると、どんな家でも
オリーヴオイルがクッチーナに、でん、と置かれていた。
冷蔵庫にバターも入っている場合もあったが、ない場合も多く、
あったとしてもあまり頻繁に使われている形跡はない。

明らかにオリーヴオイル中心、アルプスの北側とは異なる食文化なのである。

その後、私にはイタリア人のラガッツォができたわけだが、
彼によればオリーヴオイルとその他の油およびバターの利用は
次のようなものであった。


オリーヴオイル
イタリア産のもの、トスカーナ産かプーリア産のものが好ましい。
色は緑が強いものがよい。
田舎風ににごっているものも風味がよいが、早く使うこと。
加熱調理用と香り付け用と、二種類そろえておく。

☆加熱調理用
パスタのソースをつくるときや、野菜を炒める際に使う。
エクストラ・ヴェルジネが好ましいが、なければただのヴェルジネ
でもよい。
ちなみに、私のみたイタリア人家庭では、「イタリア一のシェア」
と謳われるだけあって、みんな「ベリトーリ」のエクストラ・ヴェルジネを
使っていた。

☆香り付け用
塩と混ぜてパンなどにつける。
あるいは特別の際(来客など)にドレッシングや料理の風味づけに利用。
おしえてくれたイタリア人は「ラウデミオ」を好んでいた。
「ラウデミオ」の場合、瓶が透明なので、退色しないように必ず
買ったときに入っている箱にいれること。


その他の油

☆ひまわり油
揚げ物の際に利用。オリーヴオイルは使わない。

☆バター
風味づけやプリモ・ピアットの際に。
例えばパスタのバターソースとして利用。
バターとパルミジャーノ、バターとセージ、じゃがいものトルテッローニの
ソースなど。


もちろんオリーヴオイルの銘柄や産地などは個人の好みがあるとは思うが
(イタリア人は地元好きなので。彼の場合、フィレンツェ出身で、父親の
出身地がプーリアだったこともオリーヴオイル選びに影響していると
思われる)、フイレンツェでは多かれ少なかれこのようなものだったと思う。

この点、オリーヴオイルテイスターの先生に話したところ、
「あの人たちも、地元のオリーヴオイルへの思い込み強いからね」
とおっしゃっていた。
たしかに、スペイン産のオリーヴオイルなど敵視するきらいもあったが、
美味しく品質のよいものが多いのも事実である。

そういうわけで、次回は、基本的なオリーヴオイルの分類について
まとめてみるつもりです。