オクタヴィアヌスのチーズ
こんばんは。
昨日は、仲間内の新年会で、夜中まで飲んだり食べたり。
みんな、チーズが大好きなので、余興のひとつとして、
をつくってみることにしました。
古代ローマ帝国といえば、贅沢三昧というイメージがあるかもしれませんが、
古代ローマ研究の最も基本的文献のひとつであるスエトニウス『ローマ皇帝伝』にも書かれているとおり、
初代皇帝のオクタヴィアヌスは質素な生活を好む人物であったようです。
スエトニウスのアウグストゥス(オクタヴィアヌス)伝の中には、彼がチーズや雑魚などで
簡素な食事を済ませていたことが記されています。
それでは、オクタヴィアヌスの好んだチーズとは、どのようなものだったのでしょうか。
『古代ローマの調理ノート』(原典:アピキウス、翻訳:千石玲子、解説:塚田孝雄、小学館)によれば、
以下の如し。
「牛乳が壺のなかで凝固しはじめたら、まだあたたかいうちに、いく片かに切りわける。
ふっとうしたお湯にとおしてから手で押して形をつけるかツゲの木の型のなかでおす。
塩水に入れてかためると、味がよくなる。
リンゴの木か藁で燻煙して色をつける。」
ここに記述されている方法、つまりミルクの凝固→カードカット→加熱→型入れ(圧搾)→加塩(ブライン法)は、
まさに現在でも行われているチーズの作り方そのもので、それも驚きに値するのですが、
いまここで注目しているオクタヴィアヌスの好んだチーズというのは、つまり、
“できたてのチーズを、スモークしたもの”
ということになります。
いたって、シンプル!!
これなら、私たちも、簡単に試してみることができるというわけです。
そこで、今回は、フェタチーズと燻製用のりんごの木片を用意してみました。
フェタチーズはできたてのチーズを塩水に漬けたものなので、「塩水に入れてかためると、味がよくなる」
というプロセスを省略できます。
そして、15分ほど流水で塩抜きしたフェタチーズを、りんごの木片で、スモーク!!
したものが、これです。
琥珀色に色づいたチーズの表面はとろんとして、薫香ただよい、まさに食欲をそそります。
そして、試食。
フェタチーズ故の酸味が苦手な数人を除き、薫りも口どけもおおむね好評。
私自身は、燻製することで、フェタの酸味が際立つなとは思いましたが、
独特の個性的な味わいを気に入りました。
ところで、ここまで読まれて、
「本当にフェタでいいの??」
と思われた方もいらっしゃることかと思います。
つまり、フェタチーズは、羊のチーズなのです。
それに対して、『ローマ皇帝伝』にも『古代ローマの調理ノート』にも、
オクタヴィアヌスが好んだのは「牛乳」のチーズと書かれています。
「だったら牛乳のチーズだったのでは??」
という可能性もありますが、どうも、これもすっきりしない。
何故なら、古代世界では、牛の乳はほとんどチーズに用いられておらず、
羊か山羊の乳を用いるのが主流であったからです。
では、単に「ミルク」に該当するラテン語「lac」が牛乳と翻訳されたのか。
これも研究者の翻訳なので、原典をみないことには間違いとはいえない。
ということで、さっそく、アピキウスもスエトニウスも、ラテン語の原典を
注文しましたので、届き次第、訳してご報告します。スミマセン。
でも、余興でしたので。。。
そして、余興のレベルでは、オクタヴィアヌス風フェタでも、
十分、楽しめることうけあいです。
ぜひ、試してみてくださいね!!
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