にんじん・クミン・ゴルゴンゾーラ!!!

こんばんは。

昨日あたりから、目がとても疲れているので、にんじんを食べてみることにしました。
私は、中国薬膳を料理研究家のパン・ウェイ先生に師事しているのですが、
生活リズムの関係から、肝臓が疲れやすく、そのせいで目が疲れのだといつも言われます。
そんなときは、青菜やにんじんを摂るのが効くのです。

いつもは中国料理風に、ゴマ油などを利用して和え物にするのですが、
今日は、イタリア風にしてみました。

「にんじんのクミン入りゴルゴンゾーラソース」

これ、ちなみに、創作料理ではありません。
ロンバルディーア地方の、伝統料理のひとつ。

作り方はいつもどおりに簡単です。
ソースは、ゴルゴンゾーラ・ピッカンテを刻んで、生クリームでのばし、
ほんの一つまみのクミンシードを入れます。
それを、スライサーで千切りにしたにんじんにあえるだけ。
ここでポイントは、にんじんはスラーサーで処理すること。
包丁で千切りするより、野菜の繊維がこわれるので、こういった和え物が
なじみやすくなるのです。

さて、ここで、なぜクミン??と思われる方もいらっしゃるのではないかしら。

クミンといえば、インド料理を思い浮かべる方も多いはず。

けれど、ヨーロッパ世界では、古くから使われているスパイスなのです。

古代ローマ時代は、肉や魚の調味料として、そして古代ローマの必須アイテム「ガルム」に
混ぜられ、さまざまな料理の調味料として活躍しました。
ちなみにガルムとは、「古代ローマ人なんでもこれふりかけてるでしょ」ってくらいに
利用されている魚醤のことです。
オクタヴィアヌスのチーズ」で紹介させていただいた、アピキウスにも、
ガルムと酢をあわせた調味料の作り方がのっていますが、その中に必ずクミンは入れられています。

中世ヨーロッパ。それはもう、スパイス天国でした。
これでも、というほど、料理にスパイスを入れるわけです。
たしかにクミンは、イベリア半島を除いては古代ローマほどの活躍ぶりはみられないのですが、
レコンキスタが完了するのは1492年ですからね!!それまではイスラム勢力があったのです)
それでも、パンに入れられたり、いろいろと利用されていました。
私も、シエナでとある中世料理の店に行ったことがありますが、そこでの黒パンには、
クミンが入っていたのを覚えています。

16世紀以降、徐々に料理の価値観が変わっていくという点は、非常におもしろい問題点なのですが、
ここではさらっと。
たとえば、パンについての考え方も変わってきます。
「白く」「やわらかく」「スパイスの入っていない」パンが「おいしいパン」という考え方が
根付いてくる。
そうなると「あそこのパンにはクミンが入っている」という表現が、ネガティヴな意味で
使われるようになってきます。しかしながら、ポーランド(当時は大国でしたから)などでは
穀物が乏しいのか、王侯貴族もライ麦のクミン入りパンを食べていたようで、依然として、
王の食卓が多分に中世の香りを残したもの(つまり、17世紀、18世紀のフランス人は辟易する
ほどスパイスたっぷり)だったこととも結びついているような気がします。

と、ざっくり、ヨーロッパの歴史とクミンの話をしてみてみたわけですが、
今でも、ドイツや東欧ではクミンを利用する料理はソーセージなどありますよね。
チーズにも、オランダのスパイスゴーダのような、クミン入りゴーダがある。
クミンは大航海時代のたまものではなく、ヨーロッパ世界の伝統だったわけです。

と、いろいろごたくを並べてみましたが、ゴルゴンゾーラとクミンは、あうのですよ。
今でも、ネットのレヴェルでもちょっと調べれば、たくさんレシピがでてくるくらい。

私も、カレーの隠し味に、ゴルゴンゾーラをよく使っています。