コテキーノ、コテキーノ!!!

今日は、新年初の、イタリア語のレッスンに行ってきました。

私のイタリア語の師匠は、ファブリツィオ・グラセッリ氏。イタリアに行く前も彼に習っていて、
一年前に再会、それ以来、週に一回通っています。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ファブリツィオはワインの本も出しているほどの大変な食通。
そんなわけで、レッスンでは、大概、「食」についての話題になるのですが、今日のテーマも、もちろん「食」。
それも、「お正月料理」です。

「日本人は、日本の正月は特別だって言うけど、本当にそう思う??」
これが、開口一番のファブリツィオの問い。
「そうは思わない。基本的に同じじゃない??」
これが、私の、答え。

日本人は、神社や初詣、おせち料理にお正月のさまざまな行事を特別なものとして大切に
しているけれども、家族や大切な人たちと集い、特別な食事をする、というのはイタリアだって同じ。
宗教、思想、様式は異なっているかもしれないけれども、根底にながれるメンタリティは一緒だと思うのです。

「ヒロコはイタリアでお正月を過ごしたことはあるの??」
「ええ、2回ある。一度はトリノで、もう一度はフィレンツェで」

トリノはご存知、ピエモンテ州の州都。古いブログにも書いていましたが、イタリア時代、私には
“ドンキローネ氏”というラガッツォがいて、彼の家族とお正月をトリノで過ごしたのでした。
家族といっても、お母さんのアドレアーナ、長兄のダニエーレと妻のナディア、子供のミケリーノ、
ドンキローネ氏と、私。次兄のダヴィデは、楽しくミラノで新年のフェスタ中だったので、
こじんまりと6人で。
それでも、スプマンテ(ドンキローネ氏はオペラ歌手だったので、ミラノスカラ座に敬意を表して、常に
フェッラーリを用意して)を山ほど、女性陣に用意した兄弟お気に入りのブロード入り自家製トルテッローニ、
そして、コテキーノとザンポーネのレンズ豆添え!!

そう、コテキーノとザンポーネ。これこそが、イタリアのお正月の必須メニュー!!

最近になって、日本のリストランテでも年末年始の時期に見かけることもありますが。
どれだけ食べている人がいるのかしら。

ご存知かとは思いますが、一応説明しておくと、
・コテキーノ cotechino は、豚肉の腸詰。お肉だけでなくゼラチン質などいろいろ入っていて太くボリュームがあります。
・ザンポーネ zampone は、豚足にコテキーノと同じ中身をつめたもの。

実際、かなり、こってりとしていて、まちがって一皿など食べると大変なことになるのですが、こういった
家族の食卓では女性であれば数切れつまむだけなので、問題はありません。

「いまは全国的だけど、本来は、エミリアロマーニャ、北の文化のものだよね」
ミラノ出身のファブリツィオが言うように、南では数十年前まではあまり食べられていなかったもの。
ドンキローネ一家との食卓でも、彼らが子供のころ(ということは40年近く前)のプーリアでのお正月の話で
もりあがっていましたが(お父さんがプーリア出身だったのです)、コテキーノは出てきませんでした。

朝から女性たちはお正月の料理、ブロード入りパスタ、焼いた肉などなどを作り続け、みんなで昼食、
大人も子供も男性はその後サッカーをして楽しみ、女性は相変わらずブロードを火にかけながら、夕食の用意を。
そして夕食でもご馳走が出て、夜がふける・・・。

「それでも、今のイタリア人にとって、コテキーノはお正月になくてはならないでしょ??」
私は、トリノで過ごした数年後の、フレンツェでのお正月を思い出しました。
そのときは、トリノではクリスマスを過ごして、お正月はフレンツェで。
「マンマのコテキーノはないけれど、どうしてもコテキーノが食べたい」
と騒ぎ出したドンキローネ氏と、1月1日でも開いている、観光客用ではないお店をポルタプラートの先で見つけました。
入ってみれば、イタリア人で満員。しかも全員のお皿がコテキーノ!!
「お店の人、楽だね」と笑ったものです。

ちなみに、このドンキローネ氏、日本でもお正月を過ごしたことがあるのですが、このときもコテキーノ病に。
しかたなく、探した結果、やっと六本木でコテキーノを出す店をみつけました。
日本人のお客は何人かいましたが、コテキーノを頼んだのは私たちだけ。
イタリア料理のお店が増えても、なかなかイタリア文化とまではいかないなぁ、と思いました。

さて、そんな回想は置いておいて。

「今年は、イタリアでもコテキーノの消費が増えているらしいんだよ」
というのが、ファブリツィオの、本日のテーマ。
1月1日の、コリエレ・デッラ・セーラ(ミラノの主要新聞)の記事によれば、景気の悪化が起因してか、
今年はイタリア人の三分の二近くの人たちが、お正月を家、あるいは友人の家のパーティーですごしたとか。
さらに、数年前までは、いわゆるお洒落なデリを買ってきて、楽に楽しもうという風潮であったのに、
今年はメニューも、伝統的な「コテキーノとザンポーネのレンズ豆添え」が主流であるとのこと。
一応、それに、ポレンタをきれいに飾るのが今年流らしいですが・・・。

その結果、今年のお正月、のべにしてイタリア人一人当たりの、スプマンテ消費量は2本(!!)、
コテキーノ1〜2切れ。こうするとピンとこないかもしれませんが、6,000,000キロの消費、と思うと、
なんかすごいでしょ。お正月だけで6000トン・・・。

とはいえ、こうやって伝統的な文化に回帰するのも、よいじゃないですか。

私も、日本人として、おうちパーティー、家族とのつながり、大切にしたいなと思いました。